制癌治療効果、殊に癌化学療法の効果を最も強化せしめ得る内分泌環境の樹立を企てる目的のもとに、内分泌環境と制癌治療との関連性を、各腫瘍毎に追求研究した。 斉藤は、化学療法と副腎皮質ホルモン(GC)併用の作用機作を、担癌生体の免疫応答性から解明する手初めとして、患者単球の免疫応答性をみる高感度指標として、プロスタグランジン【E_2】産生機構を検討評価した。 上條は、thyropin releasing hormone(TRH)投与後、癌患者血中Growth hormoneのparadoxical response及び、癌患者のlow【T_3】症候群などを検討した。 涌井は、腫瘍細胞が、分裂増殖の為にZnを必要とすることを前提として、副腎皮質ホルモンのZn代謝に及ぼす影響を、癌との関連から検討した。 長瀬は、無アルブミンラット(NAR)のホルモン環境と発癌の関係及び、制癌剤投与によるホルモン動態について検討、ほとんどの制癌剤で、TSHの低下を認めた。 安達は、Aromatase抑制剤であるAminoglutethinideの進行乳癌における治療効果と生体内ホルモンの変動を研究し、骨転移例に効果を示すことが多く、その機序として、末梢組織におけるAromatase抑制の関与を推測した。 児玉は、実験乳癌モデルとしてのエールリッヒ腹水癌担癌マウスを用いて、エンドキサン(Ex)の抗腫瘍効果に対する宿主ホルモン環境の影響を解析し、ハイドロコーチゾンとEx投与間隔、実験食などの差異による種々の結果を得た。 松本は、移植性マウス乳癌であるシオノギ癌を用いて、ホルモン療法下に増殖してくるホルモン評依存性癌を化学療法でおさえ、その作用機序を、それぞれ解析できたと結論した。 螺良は、甲状腺機能の変動が、腫瘍の増殖、転移に及ぼす影響を検討するため、マウスの同系、自然発生腫瘍であるLewis肺癌を用いて実験し、機能低下状態では、増殖、転移の抑制をみるなどの結果を得た。 以上の如く、各研究成果は、さらに原点に基づいて検討すべきものが多いと考えられた。
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