本研究班の昭和60年度の主たる研究成果は次の様である。 1)免疫血清療法モデル。高橋班員はマウスMM抗原に対するIgM抗体を用い、そのモノマー(IgMs)とマイトマイシンCの結合物を作製した。in vitroでの選択的細胞傷害活性は認められたが、以前作製し検索したリシンA鎖との結合物に比して活性が低かった。 2)マウスモノクローナル抗体により検出されるヒト腫瘍細胞抗原。今井班員は新らしい糖鎖抗原であるYH206を検出するIgM抗体を用い、エンザイムインムノアッセイを確立し、胃癌、膵癌患者の血清中の抗原を高率に検出している。益子班員はラットの同系腫瘍免疫により、ヒト脳腫にも高い選択性を示すFR77抗体を得ており、対応抗原が中性糖脂質であることを明らかにした。片桐班員はT31T細胞レセプター複合体に関連している30141K分子を検出する2抗体を作製した。本抗原分子はT細胞の機能及びT細胞系腫瘍の発生を解析するのに重要であると考える。 3)腫瘍抗原の基礎的研究。珠玖班員はヒトmyc産物に対する抗体の作製を目指し、mycを既でに単離し、その発現に努めている。又ras産物に相当する人工ペプチドで免疫し、1抗体を得、解析を進めている。葛巻班員はマウスRSV腫瘍に対して作製した抗体が上皮成長因子(EGF)レセプターの異常発現が認められるヒト腫瘍細胞に反応することを観察し、腫瘍抗原とEGFレセプターとの関連を検索し始めている。高橋班員は雑種細胞形成法によりヒトT細胞分化抗原、Tp40、の支配遺伝子が第17染色体に存在することを明らかにした。 4)腫瘍細胞に反応するヒトモノクローナル抗体の作製。広橋班員はマウスとの異種間ハイブリドーマによりi血液型抗原に対する抗体を作製した。又EBウイルス感染法と異種間ハイブリドーマ法と組合せることにより効率の良いヒトモノクローナル抗体作製法を開発した。
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