制癌剤5FU及びメトトレキセート(MTX)の併用による癌化学療法は、RNA代謝修飾、即ちbiochemical modulationを指向した併用である。我々は、これらに立脚した制癌効果増強を目標として種々の実験を行い、以下のような実験結果を得た。 1.【10^(-6)】M5FUの存在で、細胞のRNA、特に45SprerRNAのプロセシングは、著しく阻害される。又その後のプロセシングでも28SrRNAの形成は、著しく阻害をうけるが、18SrRNAは殆んど影響をうけない。 2.【^3H】-5FUでラベルしたprerRNAがすべてプロセシングを受ける24時間後に、もう一度prerRNAをラベルしても、やはり、プロセシングは阻害されていた。 3.MTXにより、L1210細胞内のPRPPは、培養2〜3時間で、最大となり、【10^(-6)】MのMTXでは、培養前の約24倍となる。これに反し、対照として用いたBD【F_1】マウスの骨髓細胞では、MTXによるPRPPの上昇は、認められなかった。 4.L1210細胞に於て、5FUの酸不溶性画分への取り込みは、MTXにより増大するが、増大の程度は、MTXと5FUの同時処理よりも、MTXを5FUの2時間前に処理した方が大きい。 5.5FU耐性のL1210細胞は、培地に5FUを入れておいても、細胞内への取り込みは認められないが、MTX共存下では、5FU感受性細胞と同様に取り込む。 6.L1210細胞への5FUのとり込みは、MTXにより増大する。 しかし細胞内PRPPはMTX処理後2〜3時間で最大となるが、5FUの最大の取り込みは、培養5時間後にみられた。又L1210細胞の酸可溶性画分、ternary complexへのMTXによるとり込みの増大は、PRPPレベルの上昇と時間的には一致してみられたが、PRPPレベルの上昇の程度とは相関を示さなかった。従って5FU nucleotideの生成は、単に細胞内PRPPレベルのみによって規定されるものではなく、又RNAへの5FUのとり込みも細胞内の5FU nucleotide生成のみに依存するものでないことを示している。
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