ブロスタグランジンの細胞増殖や分化への影響は1972年のPrasadらの研究に始まる。1982年、早石らはPG【D_2】がん1210がん細胞に対してブレオマイシン相当の増殖抑制効果を報告した。この研究を契期として、その後、軟体サンゴから単離されたクラブロン類のがん細胞抑制効果、そして最近のブナグランジン類の発見へと進展した。プナグランジン類に至っては、その抑制効果は、実用医薬として知られるヒンクリスチンやアドレアマイシンに匹適する。交又共役ジエノン構造に焦点をおく分子設計が実用医薬開発に向ってすでに始動している。このような傾向とあいまってプロスタグランジンの大量供給への要請は高まる一方であるが、これらは、生体内超微量成分であるため化学合成法によってのみ供給可能である。本研究者らは、有機化学的アプローチによりプロマタグランジンおよびアラキドン酸カスケード物質の合成を企画した。局所ホルモンとしての天然型PG類は、著者ら独自に案出した「3成分連結法」により超短段階にて合成可能となった。本法はすべての天然型PG類の一般合成法を可能にしたばかりでなく、現在、実用医薬として世に出るのを待っている重要なPG類緑体のほとんどを短段階にて合成可能とした。また独自に案出した収来的合成法により海産エイコサノイドの短段階合成法を実現した。この方法により、10位ハロゲン置換プナグランジン類緑体の合成が達成された。合成した最小単位化合物はプナグランジンと同等な活性を有することが判明し、ここにプロスタグランジン類をリード化合物とする制がん物質の一つが創製されたことになる。今後すぐれた医薬活性を有する類緑体の創製に向って努力してゆきたい。なお、本研究費は課題研究推進の原動力とも言える備品類および消耗品の購入のために有効に使用された。補足部分については、本研究室の現有設備を利用した。所期の目的が完全に達成されたことを報告したい。
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