研究概要 |
プロモーション過程が発がんの場に於いて極めて重要であり、またその機構が複雑であることが明らかにされつつある現在、本研究者等は、臨床的な意味は勿論、その機構解明のためにも新しい抗プロモーターの開発が必要であるとの見地から、次の研究を行ってきた。 天然抗プロモーターの短期検出法として、Epstein-Barrウイルス(EBV)活性化抑制試験法-EBVゲノムを保持したRaji細胞を用い、TPAに誘起される本ウイルス活性化の、被検物質による抑制率を測定する-を用いた。先ず、強力なプロモーターは炎症作用を合わせ持つ事実から、抗炎症性植物に着目し、これらのEBV活性化抑制作用を調べた。その結果、カキドオシ(Glechoma hederaceae)に強い活性が認められた。本抑制活性を指標に活性体を分離精製し、ウルソール酸(UA)及びオレアノール酸(OA)を単離同定した。両者の抑制活性は既知の抗プロモーター、レチノール酸(RA)のそれと同程度であった。しかしながら、UA,OAに関し特徴的であったことは、これら両者のRaji細胞に対する毒性がRAのそれに比しはるかに低い事実であった。UA,OAはin vivo発がん二段階試験で、RAと比肩し得る抗プロモーション活性を示した。興味あることに UAはイニシエーション一週後唯一度の処理で、充分抗プロモーターとしての効果が認められた。 以上の実験で、EBV活性化抑制作用が抗プロモーション活性と良く対応することがわかったので、多くの植物、微生物抽出物についてEBV活性化抑制作用をスクリーニングしてみた。それぞれ400種について検討した結果、植物では60種と巾広く活性が認められた。一方微生物については2種のみが活性であった。現在、さらに多くの植物、微生物についてスクリーニングを進めると共に、上記活性植物より活性体の精製単離を続行中である。
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