グルタルアルデヒドで單独固定した細胞の超薄切片を、抗血情及びプロテインAでコートしたコロイド金で染色し次の結果を得た。1.マウス乳癌ウイルス(MMTV)系。B粒子(成熟MMTV粒子)、A粒子(プロヌクレオカプシド)及発芽粒子は共に抗B粒子、抗A粒子及び抗P27血情と反応したが、抗B粒子血清では金粒子反応は外被膜を欠くA粒子で弱かった。抗gp52血清ではB粒子及発芽粒子表面に金粒子が認められたがA粒子は陰性であった。A粒子にかこまれた空胞膜に強いgb52の発現があった。MMTV LTRのORF蛋白は主として細胞質に分布した。アクチンはわづかながらB粒子及発芽粒子に認められた。2.成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-I)系。MT-2細胞ではpx蛋白の局在につき有意の結果が得られなかった。3.HTLV-I関連サル・ウイルス系。抗HTLV-I抗体陽性のサルの培養細胞は全例HTLV-I類似のウイルスを含み、これは大小不同がいちじるしいのが特長であった。これらは抗HTLV-I血清、成人T細胞白血病患者血清、各種サル血清とよく反応し、同種血清に反応がより強く、本ウイルス群が 宿主特異的に進化したことを思はせた。4.麻疹ウイルス系。N蛋白は(1)核内ヌクレオカプシド(NC)、(2)細胞質NC、(3)発芽ウイルス、(4)成熟ウイルスの全てに含まれるが、P蛋白は(2)(3)(4)、M及HA蛋白は(3)(4)のみに限局した。5.考察と展望。本研究は各種ウイルス抗原を細胞内及Virion内に局在し、Virionの形成過程の解析に寄与すると共に、各種virion及その関連構造の抗原性の比較を可能にした。これは超薄切片法の成果であるが、包埋前染色怯に比べると大半の抗原が包埋剤のため反応に參加出来ない欠点がある。今後は包埋前染色怯と超薄切片怯の利点を兼ねそなへた超薄凍結切片怯の利用がのぞましい。尚、本研究はウイルスの如き小型構造物に免疫コロイド金怯を適用する際の諸問題をとり上げ檢討した。
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