成人T細胞白血病の原因ウィルス(ATLV)に対する抗体やそれと類似のウィルスが、ニホンザルなどのオナガザル科のサル類にかなりの頻度で見いだされたことを契機として、サルのリンパ球が注目を集めている。またサル類を、がんを初めとする各種疾患のモデルとして使用する例も増加して来た。これらの研究においてはサルの白血球の動態解析は不可欠であるが、ヒトリンパ球用に開発されたモノクローナル抗体の多くのものはサル白血球と反応しない。本研究においては、ニホンザルのリンパ球のサブセットに対するモノクローナル抗体を作製し、応用することを目的とした。 1)ニホンザルより分離したT細胞、B細胞およびそれより分離確立されたT細胞系のセルラインのリンパ球を免疫源とし、BALB/Cマウスの腹腔内に3回投与、脾細胞を取り出しBALB/cマウス由来のミエローマ細胞(SP-2)とをポリエチレングリコールにより融合させ、HAT培地選択を行なった。2)ハイブリドーマの培養上清の抗体産生の有無を調べ、抗体を産生している融合細胞をクローニングし培養規模を大きくするか、あるいはマウス腹腔内に投与し腹水を得て抗体を調製した。得られた抗体について、サル末梢血リンパ球、T細胞、B細胞、さらにT細胞系、B細胞系およびマクロファージ系のセルラインとの反応をしらべ、抗体のクラス、サブクラスは抗マウスIg抗体を用いてELISA法で決定した。3)現在までに、汎T細胞を認識する(UI)、サプレッサーT細胞と思われるT細胞サブセットを認識する (UZ)、他のT細胞サブセットを認識する(U3)、B細胞およびモノサイトを認識すると考えられる(JMLA mz)、NK/K細胞の(U5)の5種類のモノクローナル抗体が得られ、他のサル類白血球との反応性についても調べた。
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