性ホルモン依存性癌増殖の分子機構解明の為、性ホルモンレセプターの解析、ホルモン依存性癌細胞株の樹立、ホルモン依存性癌増殖因子の同定を試みた。従来ステロイドホルモンレセプターの解析はホルモン結合能を指標としておこなわれてきたが、最近エストロゲンレセプターに対するモノクロナール抗体が利用可能となった。この方法を導入することにより、エストロゲン依存性癌増殖を抑制する薬剤である抗エストロゲン剤(タモキシフェン)をラットに投与した際、ホルモン結合能は消失しているが モノクロナール抗体で検出可能な"レセプター"が大量に出現することが 子宮のエストロゲンレセプター系で明らかとなった。この特異なレセプターの分子種の出現は タモキシフェンの抗エストロゲン効果と良く相関すること、ホルモン結合能は消失しているがクロマチンとの結合は可能であることより この新しいエストロゲンレセプターの分子種は重要な生物学的意義を持つことが示唆された。又マウス睾丸間質細胞腫にも同様なエストロゲンレセプターの分子種が存在することも判明した。性ホルモン依存癌のモデルとして、マウス睾丸間質細胞腫とマウス乳癌(シオノギ癌115)を用いた。前者はエストロゲン依存癌で、初代培養でエストロゲン効果を発揮し得ること、この効果はインスリンで増強されるがEGFやTransferrinでは影響されないことが判明した。この細胞を継代し4回のクローニン後 エストロゲン依存性増殖を示す細胞株を樹立した。後者はアンドロゲン依存性癌で培養が可能であり、無血清培地でアンドロゲン依存性増殖を示すクローンを得ることに成功した。アンドロゲン存在下で得たcordition mediumは強力な細胞増殖刺激能を有しており、アンドロゲンが癌細胞を刺激し、増殖因子を分泌し、Autocrine Controlにより癌増殖を制御していることが示唆された。現存増殖因子の性状の解析と精製を行なっている。
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