研究概要 |
本研究は最も形質転換の困難とされているヒト2倍体線維芽細胞のX線照射による部分形質転換と特異的染色体再編成および増殖制御に関連する発癌遺伝子の発現について明らかにし、さらにc-onc導入によって不死化や癌化形質獲得を目的とする一方、不死10T1/2細胞へのc-onc導入による癌性転換を目的とした。 ヒト2倍体線維芽細胞では、400-600ラドX線の単一・反復照射によって、細胞寿命の延長のみを示す第1グループ、細胞寿命の延長はないが細胞形態の変化、フォーカス形成能と寒天内(AI)増殖能をもつクローン(第2グループ)及び、上記4転換形質をすべてもつ第3グループに部分転換クローンが得られた。染色体研究は、第1グループは第22染色体のc-sis局在近傍や第1染色体のN-ras,Boym近傍に相互転座切断点を、第3グループは特異的転座t(1;5)を、第2グループは正常2倍体をもつことを示した。細胞性発癌遺伝子の発現をDNA/mRNAドット法で検討すると、細胞寿命の延長した第1・3グループではc-mycの活性化がみられ、形態変化とフォーカス・AI増殖能を示す第2・3グループはBlym活性が著しく上昇し、myc活性が細胞寿命の延長や不死化に寄与し、その他の癌形質の表現にはBlym活性が関与することが示唆された。外来遺伝子導入頻度の高い第2グループ細胞に細胞性発癌遺伝子(DNA結合性、細胞膜性増殖因子性)を単独・組合わせで導入した結果、c-myc導入によって形質転換フォーカス形成能が顕著に増加し、細胞寿命も著しく延長し、不死化と癌形質を示すようになった。このクローンのサザンブロット分析はゲノムあたり数10コピーニ増巾したc-myc DNAを保持した。X線+コルセミド処理による異数性導入も著しい細胞寿命の延長を起こした。c-myc活性の比較的高い不死10T1/2細胞への活性化T24c-H-rasの導入は強力にタイプ3に形質転換させ、ゲノムに1〜数コピーのH-ras遺伝子をもっていた。
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