末期がん患者における免疫抑制機構の重要性が指摘され、それが免疫療法の治療効果に対する障害になっていると考えられる。免疫療法を発展させるためには、こうした免疫抑制機構を解明し、その制御手段を応用することが重要である。そこで本研究においては、免疫抑制機構の細胞性要因としてサプレッサー細胞、体液性要因としてサプレッサー細胞誘導因子について解析し、その制御方法に検討を加えた。 細胞性要因であるサプレッサー細胞活性をがん患者において検討すると、胃がんを初めとし消化器がん患者においては高いことが示された。胃がん患者においてはCon A誘導サプレッサー細胞(Con AS)活性は脾において最も高く、spontaneousサプレッサー細胞(Sp S)活性は脾静脈血、末梢血リンパ球において高いことが認められた。病期の進行に伴ない脾のCon AS活性は低下し、脾静脈血でのSp S活性は上昇する傾向を示し、脾においてはサプレッサー前駆細胞が豊富であり、脾において成熟分化し、脾静脈に移行することが示唆された。脾におけるT cell subsetの分布をmonoclonal抗体を用いた酸素抗体法にて検討すると、脾はLeu2a陽性細胞が高頻度に認められ、活性と考え合わせるとサプレッサーT細胞が豊富であるといえる。脾におけるサプレッサー細胞誘導には、脾の附着細胞がサプレッサー誘導因子あるいはhelper細胞として作用することが認められた。こうしたことより、脾は免疫抑制に関与することが示された。一方、がん患者血清中にはサプレッサー細胞誘導因子が存在することが示され、サプレッサー細胞を介した体液性免疫抑制機構の存在が認められた。免疫抑制機構を制御する手段として、脾摘を検討し、脾摘により胃がん全摘例の予后がよいことが認められた。また、BRMによりサプレッサー細胞の修飾及び血漿交換療法による抑制機構の消失が認められた。免疫抑制機構の制御方法を導入した免疫療法の可能性が示されたといえよう。
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