成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-【I】)の家族内感染はこれまでの血清疫学的調査から明らかになってきている。そのなかでも母子感染の可能性が強く疑われている。 我々は昭和59年にHTLV-【I】感染白血病細胞をマーモセットへ経口投与し2ヵ月後にseroconversion及びマーモセットリンパ球にHTLV-【I】抗原を証明することが出来た。昭和60年度はHTLV-【I】感染母親の母乳による母子感染のルートを明らかにするため下記の研究を行った。 出産後1週間以内のHTLV-【I】感染産婦の母乳をコモンマーモセットへ計28回、1回/日経口投与した。その結果、2ヵ月後にマーモセットの抗HTLV-【I】抗体が陽転し、同時に末梢血リンパ球の短期培養でHTLV-【I】抗原の発現を認めマーモセットがHTLV-【I】に感染していることを証明することが出来た。 この結果は人における母乳を介する母子感染の可能性を実験的に裏付けるものである。 しかしながら、これはあくまで動物実験にすぎず今後はHTLV-【I】感染母親からの出生児のなかで母乳栄養児と人工栄養児を比較することが重要である。現在、既にHTLV-【I】感染母親からの出生児の追跡調査を開始しており、近い将来この問題をいっそう明らかにすることが出来ると考えられる。
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