研究概要 |
造血器腫瘍由来の株細胞は、染色体構成の規律性や易変異性を追求すれば、研究上の利用度がさらに高まる。今回われわれは世界各地、ならびに本邦で樹立された造血器腫瘍由来樹立株細胞のうち、T細胞性16株、B細胞性14株、nonTnonB 4株、non-lymphoid 9株の計43株について細胞遺伝学的に詳細な検討を行った。染色体数のモードは、ほとんどが2倍体域にあったが、4倍体域のものが7株、3倍体域が1株であった。これらの細胞株につき、高精度分染法を含む種々の分染法を駆使して染色体分析を行い、ISCN(1978)のdetailed systemに基づき核型の記述を行った(研究発表-1参照)。以下、T,B細胞株でみられた異常の特徴を要約する。B細胞株でみられた異常のきわだった特徴は14q+であり、14株中12株で観察された。典型的なt(8;14)はそのうち8株にみられ、またvariantの14q+は、t(6;14)、t(13;14)、t(2;14)などによるものであった。性染色体の欠失や構造異常も7株でみられ、単純な数の異常にとどまるものは1株もなかった。T細胞株もほとんどが相互転座、逆位、欠失などによる複雑な構造異常を示した。consistentな異常として、2p23での切断が5株で見出されたのをはじめ、3株で14q11→13のsegmentが関与した派生染色体が見出された。次に、株細胞の染色体構成の普遍性に関し樹立前後の核型の比較を試みた。その結果、株細胞でも基本的な染色体構成は継代後も保持されていることが知られた。この知見は、免疫学的な細胞表面の性状などと共に株細胞の広範囲の利用を高めるものと考える。
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