T細胞系腫瘍のクローナリティーを分子遺伝学的手段を利用して検索し、リンパ球系の悪性腫瘍の成因とT細胞の分化との関連を調べることを目的とした。そしてT細胞のクローナリティーは、B細胞と同様に抗原レセプター遺伝子の再構成様式によって特徴づけることが可能なことを再確認した。またクローン化遺伝子の解析から、単なるβ鎖Vエキソンの選択のみならず、DおよびJエキソンの選択と結合部の挿入塩基対による修飾がT細胞のクローナリティー決定に重要であることが明らかとなった。これらの分子生物学的知見を基礎として、T細胞クローン特異的制癌を目標とした抗クロノタイプ抗体の調製をヒトT細胞腫瘍株を材料として用いて確立しつつある。つぎにT細胞系腫瘍の診断・治療への抗クロノタイプ抗体応用の可能性を探る目的で成因の異なるマウスT細胞腫瘍の自然発症モデルについてその腫瘍細胞のクローナリティーを解析した。SJLマウスは、MRL/1prマウスと同様に、加令とともに高頻度にリンパ腺腫を発症しするが、【B220^+】のB細胞と並んで【L3T4^+】【Lyt2^-】のヘルパーT細胞の著しい増加が示され、多クローン由来であることが明らかとなった。一方、ウィルス性のAKR胸腺腫においては、その腫瘍細胞は単一あるいは数個のクローン由来であるが、特定のクロノタイプあるいはフェノタイプに限局されないこと、また、原発巣と転移巣ではメジャーなクローンの異なる場合あるいは同一クローンでありながらフェノタイプの異なる場合があることが明らかとなった。
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