研究概要 |
日本人の胃がんの原因究明の一助として、胃がんの患者-対照研究を行なった。最終的には3年間に胃がん群300名、性、年令(5才以内)をそろえた対照群を2群(300名ずつ)、合計900名につき解析を行ないたいと考える。ここでは本年度に調査の終った胃がん群100名、対照群200名につき、予報的に解析結果を述べる。この300名については、詳細な食習慣調査を行なった。従来報告された頻度のみの調査と異なり、フードモデル等を用い、できるだけ量的把握をするよう試みた。なお食習慣は、発病前の「通常の一週間」につき調査した。 1.変異原性の強い焼魚等との関連は、明らかではなかった。また通常食べる位の焼き方では、焼魚の変異原性は強いものではない。 2.胃がん群と対照群の食習慣は、同じ日本人であるから当然の事ではあるが、全体として類似している。 3.しかし主食である米食では、胃がん群はより多く食べ(発病前、平均値、3,750g/週対3,400g/週)、ことに30才頃の食習慣では胃がん群と対照群には相当の摂取量の差がみられる(平均値、6,020g/週対5,240g/週)。30才頃の摂取量は現在(発病前)に比べ、非常に多い。 4.牛乳の摂取量は胃がん群に少ない(発病前、平均値、1,160g/週対1,400g/週)。 5.胃がん群は、濃い味つけを好む傾向がある。また塩魚や漬物等を好む傾向がみられる。 6.味噌汁の摂取量には、両群に有意差はない。 7.近年の日本の胃がん死亡率は急激に減少しているが、上にみられた胃がんのリスク要因は、近年の食生活の変化に伴い著しい減少(例、米食の激減)を示し、両者の並行関係が興味深い。 8.以上はあくまで予報的結果であり、明らかな結果をうるにはさらに研究期間をのばす必要がある。
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