研究概要 |
悪性腫瘍の診断および治療効果の、効果的かつ迅速的な評価手段としてのIn Vivo【^(31)P】NMR分光法の応用性を、実験動物を用いて検討した。これは、腫瘍細胞の増殖過程と高エネルギー代謝中間体の【^(31)P】NMR信号を、non-ivasiveに計測するものである。マウスに移殖した固型腫瘍の計測を目的とした表面コイル法と、腹水細胞あるいは培養細胞を対象としたゲル固定潅流法の二種類の方法を検討した。使用したスペクトロメーターはいずれも大口径超伝導磁石(7cmφ)を使用したBrukerCXP-300で、121,48M【H_2】(7T)で実験を行なった。 1.表面コイル法 マウスに移した固型腫瘍の計測を目的に、直径2cm,2ターンの表面コイルを1mmエナメル線から試作し、128,48M【H_2】に同調することを確認した。C57blackマウスに、乳癌アデノカルシノーマ55を移殖し、腫瘍の増殖曲線と【^(31)P】NMR信号パターンの変化を比較し、増殖期にホスホクレアチンピークが著しく増大することを確認した。マイトマイシンC投与後の代謝パターンの変化は、ホスホクレアチン(PCr)ピーク強度が減少すると同時に、無機リンピークの増大が対応した。マウスに移殖したグリオーマに対するACNUによる治療効果も同様の方法で検討し、Pi/PCrのピーク強度比が抗癌剤の効果に対応することがわかった。 2.ゲル固定潅流法 アガロースゲル中に封入した細胞に、潅流システムによって養分、酸素を供給しながら、通常の高分解能NMRプローブによって【^(31)P】NMRスペクトルを観測した。本システムでは磁塙内に培地を送るために、途中で水モレを起さないようにすることが必須であった。本方法によって、In Vitro,In Vivoの直接的比較が可能となった。
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