人口密集地の都市の直下に震源をもつ地震が発生した場合にたとえM6級の地震であっても相当な被害が予想される。都市直下に発生した被害地震の好例である熊本地震(1889年M6.3)をとり上げ、近代的な地震学地震工学の立場から再検討し、この成果を現在の熊本市に当てはめ、近代都市における震害の予測・軽減のための基礎資料を求めた。 1. 地形地質調査から熊本市の中心を通り、南西から北東に走る約15kmの長さの立田山活断層が見出された。この断層は約7〜8万年前から現在まで動き続けている断層であり、ボーリング資料から作った表層地盤構造図及び重力異常図からも、この断層の存在が推定できた。 2. 熊本地震の烈震(震度【V】)域は、1889年当時50を越える市町村に細分割されていて各市町村毎の被害状況がわかっている。5万分の1陸地測量部地形図(明治34年初版)に家屋が存在した場所だけに倒壊率を図示すると、被害の大きい所が線状に配列する地帯がありこの位置は立田山断層とほぼ一致する。1889年の熊本地震は立田山断層の一部が活動したものと推論できた。 3. 熊本都市圏の表層地盤は4種類に大別される。地震時における震度調査から、震央距離による震度値の逓減式を基準曲線とすると、(1)供積層では基準曲線より小さい震度値を示し (2)沖積層や1587年以前の自然干拓地では震度値は基準曲線と一致し (3)1588年以降の人工干拓地では基準曲線より大きい震度値を示す。 4. 熊本都市圏内における50点以上の常時微動測定の結果から、0.1〜1秒の短周期成分は表層地盤層厚とよい相関があり、やや長周期成分(1〜3.5秒)は基盤面深度と対応する。 5. 地盤構造・最大地震の強さ・建築物の棟数分布等の資料から、建築物の震害予測を弾塑性計算から求めた。市の南西部の沖積層や干拓低地が木造家屋にとって最も過酷な地域であることがわかった。
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