本年度は群馬県において降ひょう記録計の観測を6月から3箇月間行った。夏期には同地で、レーダー(竹内)、降ひょう(梶川)、及び突風(文字)の40日間連続観測を実施した。ひょう害の現地調査、大規模降ひょうの事例解析、降ひょう予報実験(平田・羽生・小元)も行った。また、年度内に国内に発生した降ひょう・突風に関する70頁の資料集(小元)、1970年迄の30年間に関東甲信地方に発生した降ひょうに関する316頁の資料集(吉野)を印刷・配布した。降ひょうに関してはその他、防ひょうネットによる実験を行ったが、2箇所の実験地の内、1箇所に激しい降ひょうがあり、各種ネットのひょう害軽減効果の比較に貴重なデータが得られた。ネットの微気象環境(羽生)や果樹の光合成、果実の糖度に与える影響も調べた(平田)。 突風関係では、群馬農試の観測で積乱雲に伴う下降流突風の微細構造を知るに必要なデータが得られた(文字)。これは藤岡レーダー(竹内)との連携観測のお陰でもある。内一事例については周辺の気象データを収集、解析を進めている(文字・小元・竹内)。被害状況から突風の最大風速を推定する研究では、7月21日京都市に発生したものなど4例のデータが得られた(白土)。秋田県に発生した突風災害の現地調査から、マイクロバースト構造を示唆するデータが得られた(梶川)。滋賀県の気圧ネットワークでは、突風線通過時の気圧変動のデータが得られた(枝川)。気象観測塔による下降流突風の構造の研究は(花房)、本年度は顕著な事例がなく、以前の4例について記録を調べたが、これまで良く分かっていなかったダウンバーストとマイクロバーストの大気境界層内での構造の違いを示唆するデータが得られた。下降流突風の数値シミュレーション研究では、計算モデルのテストがほぼ終り、実際のデータを入力して日本と米国の積乱雲でダウンバーストの起り方が違うかどうかの理論的実験を始めた(中村)。
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