昭和60年6月下旬から7月上旬にかけて、山口県西部地区を中心にして、計1000mm以上の降雨があり、急傾斜地の崩壊、道路、河川、提防、農業用ため池の決壊など計4200箇所に災害を生じた。 今回の災害の特徴は、長雨によるものであって、急激な崩壊の発生でないため人命の損失は数名にとどまったが、時間の経過とともに災害が急速に累積されていった。 本研究は、関連分解の研究者を組織し、長雨型の豪雨による災害の実態を調査分析し、災害の発生条件を解明し、その地域性を考えての対策について提言をまとめることを目的としてはじめられた。各項目について、その実績の概要をのべる。 1.豪雨特性の調査:タルボット型の極値雨量強度曲線からその降雨の雨滴粒度分布を再現する方法を用いて、豪雨の予知の可能性を模索した。その結果、10分間雨量データベースでの過去1時間の雨量特性からの豪雨判定によって、豪雨の短時間予知が可能となり、崖くずれなどの災害を約1時間前に予知できることがわかった。 2.洪水災害特性の調査:今回の長雨型の豪雨について、農業用ため池の決壊、市街地の浸水災害の発生と降雨との関係について考察を行った、前者については、決壊によって土石流が発生した状況などについて考察を加え、後者については、各市町村単位での考察を行った。 3.地盤災害特性の調査:急傾斜地の崩壊と地すべりをとりあげ、長雨型降雨量、土質、斜面勾配などと災害の発生との関係を検討し、降雨による地盤内の飽和水位の上昇の測定が災害の予知に最も必要であることがわかった。 4.農林災害の調査:ここでは農産物被害と県内に多数あるため池の被害について調査した結果がまとめられた。前者については被害をうけやすい作物の種類やその生育状況のちがいなどを明らかにした。
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