現在の地震予知技術では、確実な情報として地震予知を送り出すことはできず、事前対策を決定する際には、予知情報の不確実性を考慮に入れる必要がある。この情報の内容としては、地震のマグニチュード、震源位置、発生時期が、ある程度の幅を持った値として与えられると予想され、これらは確率分布の形で表現することができる。これから、ある地域での地震動強さがやはり確率分布として求められる。 対策は一般的にモデル化されたものとして扱うことにし、その対策の対象となるシステムでは、実行する対策のレベルにより、ある地震動強さに対する被害率が異なってくるという考え方で被害軽減効果の違いを表現した。先に計算した地震動の分布と対策後の被害率から予知情報に従う地震が発生した時の被害が計算できる。対策レベルの違いによる対策費と被害額の和として損失を定義した。このとき、対策の開始・完了時期と地震発生時期の前後関係を考えながら、発生確率に対する損失の期待値を求める。 最適対策の決定には、決定理論で期待損失最小化基準を採用し、損失の期待値が最小になるものが最適であると定義し、このような対策を決定する。ここでの決定手法はあくまでモデル化された対策・システムについてのものだが、ある現実の対策・システムを選んだ場合にいくらかの準備のもとで本手法を利用して最適対策を決定することが可能となろう。 また、ある要因が決定に与える影響を検討することもできるため、対策側から地震予知情報に関する重要度を規定できることにもなる。
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