降雨に伴う斜面崩壊の予知、予測手法の確立は緊急な課題となっている。そこで、本研究は表層滑落型の斜面崩壊を対象にして、斜面の地域性を考慮した崩壊発生の降雨条件を求めるとともに、崩壊発生予知の簡便な手法を考案することを目的とした。 研究対象地域として千葉県東部、伊豆半島、犬山市などとし、斜面の地盤特性を把握するために現地調査を行い、その結果を考慮してもデル斜面を選定した。また、表層部の物性値を室内試験から求めた。降雨に伴う斜面表層部の地盤状態の変化は飽和・不飽和浸透解析、及びタンクモデルによる解析手法を用い、その手法の妥当性は室内モデル斜面実験によって検証した。実際の降雨や仮定した降雨に対して斜面の状態変化や飽和度上昇に伴う強度低下を考慮して斜面の不安定化挙動を求めた。飽和・不飽和浸透解析とタンクモデルの結果は斜面形状があまり不規則でない場合はほぼ一致し、簡便なタンクモデルの有用性が確かめられた。先行降雨の影響については降雨強度と累積雨量によって異なり、一定な降雨中断時間で判断するのでなく、両者を考慮した中断時間を明確にした。崩壊発生の降雨条件については各種のものを検討したが、最も簡便なものとして、平均降雨強度と時間との関係であり、斜面の平均的透水係数をパラメーターとして、崩壊、未崩壊を明瞭に区別できた。この関係を実際の降雨と崩壊の有無に適用した場合、解析結果とほぼ一致した。さらにこの関係では地域特性が明瞭に現われ、しかも各地域でもこの手法が利用できることが判明した。一方、山地小流域における降雨浸透の三次元解析プログラムを作製し、解析を行った結果、地形的な凹地に浸透が集中し、一種の水みちを形成すること、斜面中に高い透水層が存在するとその部分の上部で集中し、高い透水層の下方に水みちを形成することが明らかになり、二次元解析の短所を改良できることが判明した。
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