土石流を伴なう洪水の予測能力の向上を目的として、現象発生の critical状態量の把握の指標化、ならびに既存の降雨・流出観測システムの有効利用法を課題とした研究を行った。全体を3年間で完結するものとして予定したものであり、今年度の成果は必ずしも最終目標に近づいたものばかりではないが、初年度の研究としては極めて順調なすべり出しを見せ、以下に列挙するような中間結果を得ている。 1. 荻原、宮沢は非ニュートン流動と考えられる土石流流動の基礎理論として新たに拡張されたレイノルズ数を提案し、理論および実験の両面から検討して、ムーディ図表の利用を可能にした。 また、土石流発生源の山腹崩壊と降雨強度など気象データの関係を調べ、まだ整理中であるが、一部降雨パターンと地震動が斜面崩落に関与した事例についてはすでに発表している。 2. 坂本は、流域での降雨流出の観測および室内斜面実験により、流出寄与域の発生・変動特性による流出成分量変化が水質変化に顕著に現われることを明らかにし、さらに、水質変化が降雨強度および透水係数等の斜面特性と関係づけられることを示した。 3. 竹内は、現存のレーダ情報を有効利用した降雨予測の方法を改善するため、強雨域の自動追跡モデルを改良し、精密・確実な追跡の出来るモデルを完成させた。またさらに建設省の赤城山、三峠両レーダ雨量観測の重複域についてのデータを検討し、レーダ雨量計の精度向上のための基礎的知見を得た。 4. 砂田は、流域斜面における表層側方飽和浸透流・表面流の共存を考慮する複合kinematic waveモデルを構成し、これを用いて地形の影響、斜面飽和域(流出寄与域)の分布とその変動についての検討を行った。この結果、表層水分量の洪水指標としての可能性を認めることが出来た。
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