本研究は今日まで本研究グループの行ってきた台風に伴う強風の予測に関する研究の最終的取りまとめにあたるもので、その研究の目的は日本に来襲する台風に対する防災対策の為に、本土に来襲する台風の確率モデルを作製し、そのモデル台風によって各地で発現する風の様子を計算機上にシミュレイトし、一定期間内に考慮せねばならない暴風の極値あるいは強風の頻度分布などを求める手法を確立することにあった。 わが国において台風による風の比較的密な観測が行われるようになったのは最近30年ぐらいの間だけであり、各地の風の統計的性質を観測資料から直接求めるのは無理であり、台風の気圧場のモデルを作り、それを仮想的な経路の上を進行させてみて各地の風を予測するという方法の方が確実である。本研究グループでは最近35年間に日本本土に上陸した中心気圧980mb以下の台風の全てについて気圧場の客観解析を行い、その統計資料が集積したので、この機会にそのモデル化を行った。台風の性質はその発生頻度、中心位置、中心気圧、降下量、最大風速月径によって決定されるものとし、1時間毎の解析結果から進行方向、進行速度、中心気圧及び最大風速月径の時間変化などを含めた台風の統計的性質を日本を三つの地域に分割して求めた。 台風のシミュレイションは、電子計算機内にモンテカルロ法で上述の統計的性質を満足するような台風を1000年分程度発生させ、その台風によって問題とする地点に生じる風の統計的性質がどのようになるかを求めるという方法による。これによれば色々な経路での台風の影響を充分考えた風性質を得ることができる。 ここで問題となるのは地形による局所的な風の変形であるが、本研究ではとりあえず地表面が平坦であると考えた場合の計算プログラムを完成し、内海上のような場合の風の性質を得られるようになった。
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