強風災害の一形態として、ミクロスケールの風況に注目して、風洞実験と現地観測を中心に、前年度に引き続いて研究を進めた。 その結果、数百メートル四方程度の地域の風況は、小規模な地形因子や植生等によって大きく影響を受けており、風況を予測する一般的な法則性を見出すためには、今後なお多くの情報を収集する必要のあることが判った。 本研究の成果を要約すると以下の通りである。 1.地形模型実験の有効性について; 縮尺千分の一程度の地形模型によって、十分な精度で風況の推定を行い得る。 模型化の際には地表粗度にかかわる立木、生け垣等の再現についても十分の配慮が必要である、 また、接近流の特性を相似させるために、模型化した地域に隣接する地物の影響を考慮することも重要である。 2.現地観測; 地形模型の有効性を現地観測によって検証した。模形がひずみ模型であったために、現地観測データとの対応は、定量的には若干問題があったが、ひずみの効果を考慮することで風況の予測は可能であることが判った。 3.地形因子の風況への影響度; 特定地点の風況を周辺の地形の情報に基づいて予測する方法を検討するために、簡易な地形モデルを作成し、地形因子と風速の関係を実験結果の重回帰分析によって求めた。その結果、開口部を有する尾根の下流地点の風況予測においては、尾根高さ、開口幅が重要な因子であり 尾根の断面方向勾配も流れの剥離を支配する要因であることが判った。 一定の条件の下では予測式を重回帰分析的な手法で設定しうることも確認した。 4.その他; 全国気象官署の風観測データは収集したが、地形に関する情報の収集が未了であるため、他の多くの地点における風況と地形因子分析については、未完成に終った。
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