人間活動の影響を強く受ける河口・沿岸域生態系の望ましい制御方式を呈示するための基礎資料を得る目的で、河口・沿岸域にいくつかのステーションを設け、野外調査、模型実験、室内実験を行ない以下の結果を得た。【◯!1】河口における河川部、干潟、ヨシ原の底泥について微生物分解活性を比較した結果、嫌気的分解が卓越し、C【O_2】、C【H_4】、【H_2】Sの生成、脱窒のいずれにおいても、干潟部で極めて高い活性を示した。【◯!2】イソシジミガイの環境要求を底質と水位、塩分濃度の面より明らかにした。【◯!3】ラグーンにおいて温排水を有効に利用するための基礎として、ラグーン内流速分布の計算方式を確立した。【◯!4】蒲生潟において、底質、けん濁物質、塩分、流速の分布および水位の変化の連続観測を実施し、潟奥部に黒色軟泥が集積堆積する機構を解析した。【◯!5】干潟環境を対象生物の特性に奇じて好適にするための工法について、ポケット・ビーチ工法、作れい工法、循環流作れい工法などいくつかの工法が考案された。【◯!6】漂着アオサの除去と有効利用をはかるために、海浜に堀った溝に埋めて無機化をはかると共に、アオサ枯死体をデトリタス化し、砂粒と混合して、アサリの飼料として活用するプランを立案した。【◯!7】モデル実験水路に人工下水を流し、微小後生動物への転換と汚泥の減量化をはかった結果、微小後生動物への転換効率は15%、呼吸消散量は10%程度であった。微小後生動物は短時間には10%程度の塩水でも生存し、汽水性魚類の餌料としての価値を有することが示唆された。また水路の設計条件については接触材の種類、曝気の有無、水深、流速、水路幅、滞留時間などを検討した。【◯!8】アオサの揮発成分を分離しGC分析を行ない58成分を分離した。その中には通常海藻に存在しないとされているクロロホルムが含まれていた。【◯!9】沿岸域の大気中から、αおよびβピネン、リモネン、テルピネンが検出され、大気の生理活性作用の可能性が示唆された。
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