本年度は前年度に引き続き、以下の如く、フィールドにおける実測、野外模型実験、風洞模型実験、数値解析の各手法を用いて、都市、街区、建物近傍の各スケール毎に、高濃度汚染を引き起こす現象に焦点を合わせた研究を行い、併せて汎用性のある数値解析プログラムの開発を行った。 1.都市スケールの拡散現象に関する研究では、前年度までの成果を踏まえ、都市境界層内部における汚染質の拡散現象を捉えることを目的として、(1)乱流ゾンデ、係留気球等を用いた気象要素の垂直分布の測定、(2)タワーを用いた乱流測定と高速度応答測定器による汚染質と温度の垂直プロフィルの測定、(3)トレーサーガスを用いた拡散実験 を行った。実測期間中、上空に温度逆転層が形成されており、トレーサー実験結果を解析することにより都市スケールでの拡散現象を解明できると考えられる。 2.街区スケールの拡散現象の研究では 野外模型実験の濃度・風速データを基に風洞実験による中立状態の平均濃度分布の予測精度について検討し、高い精度の予測が可能であることが示された。また、平均風速、乱流エネルギー、乱れの長さスケール、渦動粘性係数、トレーサー濃度等の分布の詳細な測定を風洞模型実験にて行った。さらにレーザーライトシートによる気流の可視化法を考案した。 3.建物近傍スケールの拡散現象については、前年度提案した準定常モデルによる建物近傍濃度変動の予測手法の妥当性に関する検討を行うため、屋外拡散実験と風洞模型実験を行い、実測データと予測結果の相関について解析した。 4.数値解析による研究では、一般化された数値解析プログラムを用いて境界条件に改良を加え、安定大気条件下で以下の様な各スケールにおける拡散場を解析した。(1)独立建物から排出される排ガスの拡散、(2)並んだ建物の一方から排出される排ガスの拡散、(3)ストリートキャニオン内から排出される自動車排ガスの拡散
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