研究概要 |
環境汚染物質が汚染に曝露された個体の生殖細胞や胎児に到達し、後の世代にいかなる悪影響を及ぼすか、これに対して宿主側はどのような防御機構を持っているかを実験的に検討した。この目的のために本研究では主としてマウスを用い、アルコール,ウレタン,エチルニトロソウレア(ENU)などによる奇形,染色体異常,優性致死,突然変異などを観察した。以下にその概要をのべる。 1.ウレタンを雌マウスに投与した後に無処理の雄マウスと交配した場合には、子供に口蓋裂や内臓異常などの多くの奇形が生じ、その頻度は雄マウスに投与した場合の数倍であった。ENUの雄マウスへの投与によって生じる子供の奇型は、精原細胞期に作用させた場合にのみ高率で発生した。 2.妊娠7〜13日目のマウスにエタノールを投与した際の胎児の奇形等の発生をC57BLとDBA系で比較した。奇形に関してはC57BLの方が感受性が高く、胎児死亡については逆にDBAの方が高感受性であった。両系統の【F_1】についての奇形の誘発のパターンから胎児が同じ遺伝子形であっても母体効果があることが分った。 3.主要免疫応答遺伝子群であるH-2コンプレックスだけが異っているコンジェニックマウスを用いて、妊娠3〜5日目にウレタンを投与して胎児に生じる肺腫瘍の頻度を解析することによって、肺腫瘍の誘発はH-2のE領域にある遺伝子によっテ支配されていることが明らかとなった。またウレタンによって骨髄細胞に誘発される染色体異常も、この近倍にある遺伝子が支配していると考えられる。 4.水圏の汚染の遺伝的影響を高感度に検出するために5個の遺伝子座について多重ホモ接合となったメダカの系を開発中である。現在までに4つの座位についてのホモ接合体ができており、完成まであと一歩のところまできている。
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