本研究では、八代海に面する八代平野全域にわたるスケールで観測を行い、沿岸地域の大気運動に影響する海陸風の解析を試み、その特徴を明らかにすることを目的とした。観測実施日は昭和60年8月6日午前6時から翌8月7日午前10時30分までであった。全般的な気象状況としては、九州南海上に台風が接近していたがほぼ穏やかな晴天で強風等の異常は認められなかった。しかし夕立のため1・2回欠測にせざるを得ない観測点もあった。観測場所は熊本県八代市およびその北部地域で、内海的な八代海と背後に山岳を控えた平胆な平野部から成る。ここに5つの観測点を設置し、係留気球により気圧・気温・湿度・風向・風速の5要素を地上から700m上空まで、約50m間隔で測定した。測定は1時間30分毎とし、気球浮揚時には地上における気圧をアネロイド気圧計で、気温・湿度をアスマン型温湿計で測定した。観測データは、1測定高度につき時間平均した後、空間・時間補間して確定データを作成した。このデータより、海風の風向時間帯はほぼ午前6時頃から午後7〜8時頃までと思われる。しかし、海風時間帯は断続的であり陸風との区別がつきにくい場合があった。これより八代の海陸風を特徴づけているのは、背後の山岳地域の山谷風であると考えられる。局地風循環の数値シミュレーションでは、先ず1次元モデルで風の日変化・斜面角と位相の関係などを調べた。その結果斜面では境界層が非常に薄くなり、また位相は早くなるという特徴があり、観測結果の物理的解釈ができるように思われる。さらに2次元モデルで海陸風と斜面の関係を調べたが、斜面の長さの有限性がより現実的な結果をもたらした。
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