1.二酸化炭素の濃度変化と作物生産力(吉田・今井) 二酸化炭素濃度の増加が植物体に与える生理的影響を実験的に明らかにするため生育箱の開発を行い、二酸化炭素濃度、照度、温度を自由に設定できる生育箱の連続運転が可能となった。予備的な測定の結果、光合成と蒸散の比から求めた水利用効率について検討し、高二酸化炭素濃度下では、【C_4】植物は【C_3】植物より水利用に関して効率的であることが明らかとなった。これは、従来の測定結果とも一致する。 2.高二酸化炭素濃度下での気候変化と一次生産力(内嶋・清野) 現在の2倍の二酸化炭素濃度を想定して、極東地域の気候変化と自然植生の生産力の変化を、大気大循環モデルを用いて予測した。二酸化炭素濃度の倍加は3〜4℃の気温上昇を招くが、日本周辺ではそのために乾燥化することはなく、一次生産力は約9%増加することが推定された。我が国では北方ほど気温上昇と雨量の増加が大きくなると予想され、従って、一次生産力の増加は北ほど大きくなった。 3.物質生産モデルによる乾燥化の影響の解析(及川) 二酸化炭素濃度の変化の影響を群落レベルで明らかにするため、植物群落の物質生産モデルを開発し、熱帯域の乾季が存在する森林の発達過程を解析した。その結果、4か月の乾季までは安定した森林が成立しうるが、乾季がそれ以上になると、物質生産が呼吸においつかなくなり、森林が存続できなくなることが明らかになった。 4.森林伐採後の発達過程における炭素循環の変化(依田) 落葉広葉樹二次林の炭素循環の伐採後の経年変化を、野外で実測された詳細なデータをもとに;解析することに成功した。立木密度を媒介変数とした炭素循環モデルによる解析結果は、実測値とよく一致した。このモデルを用いて、さまざまな伐採間隔での森林の再生過程を予測した。
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