研究概要 |
都市は人間が作り生活するところであるが、これは自然生態系を基礎にその人為化による都市生態系を作ることでもある。この都市化によって、都市はその周辺地域を含めて人間と環境に大きな影響を及ぼしてきた。したがって、都市は生活の利便性の追求からだけではなく、快適さを併せた人間の生物的側面にとってもナチュラルなものとすべきである。そこで、都市生態系が全体としてナチュラルになるような都市を総合的な立場から描き出し、これを都市計画の基礎となるように、研究の目的を設定した。 都市の機能・構造のより総合的な理解と把握には、社会経済的にも人間生活を成り立たせるうえで、いわゆる専門の領域を越えての新な議論や方法論を必要とし、検討会や個別的な意見・資料の交換によって、一定の認識を共有するようにした。これにのっとり、各研究分担者は、既存のデータの新な視点からの見直しと検討を行い、補足や新しいデータを得るためのフィールドワーク等を、千葉県千葉・市原地区に集中させ、併せて比較対照の他都市を一部とりあげて行った。 都市化の指標としての植生の変化は、都市問比較だけでなく、地域内比較が可能な方法を作り実施し、多くの資料を得た。また従来対象とされることの少かった家畜動物のイヌ・ネコ研究では、二次野生化による自然生態系の損乱因に加えて、都市生態系の主構成要素たる人間との特別な心理的関係が生じつゝあることが判った。水消費量を軸としたアプローチ、近郊農村での都市建設の影響研究からは、都市的生活様式に段階的変化があり、また建設される都市の経済力による影響が、その大きさによって全く異る作用をする点が明らかとなった。以上の都市のもつ多面性と、そこでの居住者を、いくつかの基本的要素に組みなおし、都市モデルの作製を行ない、これについての議論を行い、以後の課題を得た。成果は和文,英文の報告書にまとめた。
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