環境大気中の汚染物質の濃度を計測するために設置された測定局の代表し得る空間的な範囲を明らかにするとともに、その配置計画に関する基準を明確にすることを目的として、本研究を実施した。本年度における研究成果を研究計画書に記載した項目順に列挙すれば、以下の通りである。 1 環境濃度分布の推定手法の適用 (1) 統計モデルによる濃度分布の推定と測定局の代表性 大気汚染濃度の地域分布の特徴を抽出するための手法を適用して全モニタリングステーションの細分割と再階層化する方法を東京都および大阪府の管理下にあるモニタリングステーションに適用した結果、一部のモニタリングステーション間の補完関係を明確にすることができた。なお再階層化は不可能であった。 (2) 拡散モデルのパラメータ設計方法 大気汚染濃度予測シミュレーションモデルの未知パラメータの最適化を行うために、直交配列表を用いた逐次近似法によって求める方法について研究し、複雑地形上の拡散シミュレーションに適用してパラメータの最適化を行い、影響度を寄与率として定量的に求めた。 2 測定局の適正配置手法 測定局の適正配置を総合的、定量的に評価する方法として多属性効用関数法を応用し、意思決定者のリスクに対する評価態度を明らかにするとともに、適正配置評価のための意思決定モデルを開発した。これを、大気汚染分野の研究者、中央官庁および地方自治体の担当者について面接調査を行った。その結果、評価項目の階層構造を明確にし、その妥当性を確認できた。また、研究者、行政官という立場によって、評価項目のリスクに対する評価態度が異なることが明らかになり、更に適正配置を総合的、定量的に評価することを可能にした。
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