変異原のテストとして、広く用いられているラット肝S-9とサルモネラ菌の系では変異原性を示さなかった農薬のアトラジン、その他は、植物の酵素系により活性化されて、変異原性を示すことが知られている、我々は、自然界の種々の生物における異物代謝系の質的あるいは量的な差異の比較研究、および、それによって生じる遺伝的影響を研究することを目的とする。1)高等植物による異物の代謝に関係すると考えられるミクロソームのチトクロームP-450を動物のそれと比較するため、東はチュウリップ球根よりP-450を精製した。その絶体スペクトルの特徴は、ラット肝などでメチルコランスレンで誘導されるタイプと似ていた。2)ダイズのT-219株の【Y_(11)】遺伝子は、不完全優性であり、突然変異を葉のスポットとして検出でき、その感受性も高い。ところが動物で発癌性の高いベンゾ(a)ピレンは、このダイズの系では、ラット肝あるいはキクイモのS-9を用いても突然変異を示さなかった(藤井)。この事実からも、生物種間の代謝系や遺伝影響の差に関しては、今後、慎重に検討しなければならない。3)メダカ成魚をメチルアゾキシメタノール酢酸(MAM酢酸)で処理すると、約2ヶ月で肝がんが誘発されるが、近交系のメダかでHO4C株は、MAM酢酸の低濃度で肝癌が発生しやすく、HB11株は、より高濃度のMAM酢酸で処理しないと肝癌が発生しない。田口は、肝癌の発生しやすいHO4C株のメダかの肝でP-450量、およびNADPH-チトクロームC-レダクターゼの活性が、HB11株よりも高いことを見出した。4)福長は多種類のアクリジン誘導体の変異原性を調べたところ、サルモネラ菌と酵母では、誘導体により差のあることを見出し、生物種により遺伝影響に差のあることを示した。5)佐藤はドバトの25の酵素の遺伝子座位を示標として環境影響の評価方法を確立するために、データの集積、および分析を行っている。
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