ヒトおよび動物の糞便に由来するウエルシュ菌を水の汚染指標の1つとして応用するため、その指標性の意義について検討した。検水は富山市内の小河川、県中央部の神通川、県西部の小矢部川、富山湾岸および富士五湖に設定した約50ヵ所の定点から採取した。菌数測定はメンブレンフィルター法(ミリポアフィルターを使用)により、ビソンらの培地、M-エンド-培地およびM-腸球菌培地を使ってそれぞれウエルシュ菌、大腸菌群および腸球菌数を測定した。ウエルシュ菌の培養は嫌気培養ビンを用い室温触媒法で行なった。細菌指標の他BOD、NH3-N、NO2-N、NO3-NおよびPO4-Pについても測定し、それぞれの相関について検討した。 その結果ウエルシュ菌は大腸菌群や腸球菌と異なり、雨後の濁水で増加しないこと、ヘドロ中で増加しないことなどの他、水中の本菌は芽胞として存在し通常の塩素消毒に耐えるため処理汚水の流入点の検索に有用であることが明らかになった。小矢部川水系や神通川水系では上流から下流に向って順次汚染が進んでおり、各種指標相互の相関はかなり高かった。富山市内の小河川では、最上流部ですでに強い汚染があり、下流になるほどウエルシュ菌は増加するのに対して、他の指標にはこの傾向はみられず、したがって各指標間の相関は低かった。富士五湖の検水では逆に汚染度が低くしかも各指標間の相関も低かった。このようにそれぞれの指標は異なった汚染を示したが、総括的にはこれらの各指標を組合せた指数をパターン化することによって、汚染度やその性質の違いが明らかになるものと考えられる。水由来のウエルシュ菌は動物実験からA型菌でしかも食中毒の原因となるエンテロトキシン産生株の率が高く、公衆衛生学上からも更に検討の必要がある。以上から、ウエルシュ菌は人間の生活する環境に応じて増加し強度の汚染水の検索にも適した特徴ある指標となることがわかった。
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