近年種々の有機ハロゲン化合物が農薬や工業用物質として多量に合成され、自然界に放出されている。これらの多くは微生物分解を受け難く、有害な環境汚染物質となっている。これらの物質に対する分解能、例えば脱ハロゲン能を細菌に付与し、その能力を担う遺伝子を環境の微生物に広く伝播することは、環境の淨化に役立つと考えられる。著者はこれまでにハロ酢酸脱ハロゲン酵素を支配するプラスミド pUOlを土壌細菌に見出し、その遺伝子解析を行なうとともに、脱ハロゲン遺伝子を広宿主域性の薬剤怪性プラスミドに生体内で組換え、広い伝達能をもつ脱ハロゲン菌を育種した。本年度は、2-クロロプロピオン酸(2cp)の脱ハロゲン酵素を支配するプラスミドを検索分離し、遺伝子解析を行なうとともに、環境の細菌におけるハロ酢酸およびハロプロピオン酸脱ハロゲン遺伝子の分布を調べた。この研究結果の概要は次の通りである。 1.2cp分解菌約25株を土壌中より分離し、これら細菌のハロ酸の資化性と、脱ハロゲン酵素を精製分離しその性質を調べることにより、分離菌を5群に分類した。 2.2cp分解菌について、プラスミドの存在を検討した結果、14株にプラスミドの存在が認められた。そのうち3株がもつプラスミドpHA16、pHA28、pHA109について、その性質を詳細に検討し、これらプラスミドが脱ハロゲン能をもつことが判明した。 3.pUOl上の脱ハロゲン遺伝子h-1、h-2、およびpHA109上の脱ハロゲン遺伝子をプローブとして、前に分離した脱ハロゲン菌のDNAとの相同性を検討し、(1)の分類と比較して、脱ハロゲン遺伝子の多様性を考察した。 4.Xanthobacterによる1、2ジクロロエタンの分解が、ピロロキノリンキノンの添加により促進されることを認めた。
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