本年度は、スィートソルガムの生育特性ならびに生産物の利用と変換について以下の5項目について試験を行った。 1.幼植物期における環境ストレスの影響:種々の温度条件下で光合成速度を測定した結果、スィートソルガムでは15.3℃に不連続点が存在し、トウモロコシに比べ、低温感受性がやや高かった。pH4〜8の水耕液で2週間生育させた結果、pH4〜6では乾物重に差はみられず、pH7で根、pH8で地上部と根の乾物重が減少した。水耕液への【Al^(+++)】イオンの添加は、5ppmの低濃度でも乾物重が減少した。従って、土壌酸性には幅広い適応性をもつが、【Al^(+++)】イオンを遊離しやすい酸性火山灰土壌では、石灰などによるpHの矯正が必要であると考えられる。 2.再生茎の生育特性について:出穂期に青刈した結果、高刈りでは高節位からの再生茎が主となり、低刈りの再生茎にくらべては生長量が劣り母茎から離脱折損しやすいことなどが認められ、低刈りが有利であることが実証された。 3.茎における糖蓄積:稈の糖蓄積速度は穂の除去によって増加し、葉身切除によって抑制された。すなわち、稈の糖蓄積はシンクとソースのバランスによって支配されると考えられる。また、稈の糖度は、ジベレリン処理によって約1.6度上昇し、適当な薬剤処理によって糖度上昇が期待できることが示唆された。 4.茎葉の成分分析と嫌気分解:収穫期の茎葉の粗蛋白質は17.3%、炭水化物含有率は48.5%であった。メタン発酵の結果、乾物1gあたり・茎葉からは約0.5lのガス発生がえられ、メタン発酵材料として最良価値が認められた。 5.アルコール発酵技術:(1)収穫期の茎の搾汁には窒素源が不足しているが少量の硫安によって十分補えることが実証できた。(2)カラギナーン法を改良した固定化酵母による回分式アルコール発酵を試みた結果、発酵歩合は昨年度試験よりかなり向上したが、固定化酵母の耐磨耗性や収率歩合の向上などについては次年度さらに検討の予定である。
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