本研究は省エネルギーの立場から、水産物の貯蔵・加工におけるエネルギー浪費の実態を明らかにするとともに、増養殖の面でも養殖法の改善や新種導入を検討し、新時代に即応した水産業の確立の資とすることを目的としたものである。 1. クルマエビを対象に凍結貯蔵試験を実施し、その間の品質変化をタンパク質組成、SDS-ゲル電気泳動分析、ドリップ生成量、pH、遊離チロシン含量を指標として追跡した。その結果、クルマエビを高品質で維持するためには、3ヶ月程度の短期間の場合には-20℃が、それ以上の長期にわたる場合には-40℃が妥当と考えられた。 2. 水産乾製品からノリをとり上げ、種苗生産、養殖および乾ノリ製造の各過程における直接および間接エネルギーの投入状況を検討した。その結果、各過程でそれぞれ、乾ノリ【10^3】枚あたり1.8×【10^3】kcal(1%)、110×【10^3】kcal(47%)および120×【10^3】kcal(52%)と算定された。また、全投入エネルギーは生産規模に逆比例し、スケールメリットがあることが判明した。 3. 低温性で、その養殖にエネルギー節約が期待できるヨーロッパウナギの適正飼育条件を確立するために、養殖池の水質の実態調査を行った。淡水養魚池ではアンモニア態窒素、CODなどの値が高いが、注水量が淡水池に比べて多く、換水率が高い海水養魚池では、収容密度が高いにもかかわらず、アンモニア態窒素、CODともに低い値を示した。 4. 循環瀘過式養魚法につき、ショ糖投入による脱窒促進の効果を硝酸態窒素、DOCなどを指標にして調べた。その結果、DOC、吸光度および蛍光強度をパラメーターにとった場合には、とくに抑制効果がみられないが、硝酸態窒素やリン酸態リンの蓄積は効果的に抑制されることが明らかにされた。
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