植物性資源のエネルギー変換とその有効利用を目指した工業規模での技術開発には、原料資源の変換を容易にするための前処理操作や効果の緻密な検討が最も重要な課題になる。本研究では林産資源のエネルギー化のための前処理ばかりでなく後処理対策をも考慮した爆砕法を取り上げ、爆砕の効果や影響、植物構成物質の低分子量化、分離操作、性状、セルロースの糖化およびアルコール醗酵に関する一連の操作を工学的立場から研究することを目的にしている。 水蒸気を用いた爆砕操作によってから松のチップが比較的容易にへミセルロース、セルロース、メタノール可熔性リグニン、残渣リグニンに分離されることがわかった。可溶性リグニンの数平均分子量は1.000以下になり、低分子量化の効果が明らかになったが、これらの分離成分量は蒸気圧、蒸煮時間に影響されることがわかった。 爆砕生成物のメイセラーゼによる糖化に及ぼす爆砕条件の影響を調べた。糖化時間の延長による糖化率の向上の効果はほとんどなく、100時間後も5%であった。蒸気圧の影響は大きく、4.51MPaでの爆砕生成物について60時間糖化で32%に達した。一方、蒸煮時間延長は糖化にとって有利でなく、4.51MPa、5分程度が最適とみられる。省エネルギーで多量の店成糖およびアルコールを得るための爆砕条件について検討した。消費エネルギーに対する糖化率の比を目的関数とし、目的関数が最大値となるときの爆砕条件を求めた。消費エネルギーは爆砕装置への物質と熱の入出力を考慮することによって推算された。から松では水蒸気圧4.2MPa、蒸煮時間3分、ユーカリでは水蒸気圧力3.3MPa、蒸煮時間5分で目的関数は最大値に達した。以上のことから、省エネルギー操作でもって多量の糖とアルコール醗酵のためには、高蒸気圧の下で比較的短い蒸煮時間による爆砕が有効であることがわかった。
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