本研究は間伐材、工場排材、林地残材などを原料とし物理的・化学的・微生物的方法により液状炭化水素・精油・糖ならびにアルコールなどの燃料または燃料化学物質を取得することを目的とする。本年度にえられた成果はつぎの通りである。 1.リグノセルロースの糖化〔越島哲夫(京大・木研)、桑原正章(香大・農)、原納淑郎(阪市大・工)、善本知孝(東大・農)〕リグノセルロースの構成成分に対するマイクロ波照射効果を検討し、照射がリグニンを低分子化し酵素反応に関与しうるセルロース表面積を増加させることを認めた。連続照射装置では228℃、3分間の加熱でリグニンの70%が可溶化した。エゾマツ樹皮のエネルギー化前処理としては1%NaOHおよびT.chrysosporiumが有効であった。糖化前処理としてのUCT溶剤処理はシクロヘキサノール・水では190-200℃が必要であった。スギ内樹皮の水抽出液を用い酵母の培養試験を行った結果、11種が強いフェノール耐性を示した。 2.リグニンの液体燃料化〔笹谷宜志(北大・農)〕クレゾール・水系を用いた木材のソルボリシス蒸解でえられるリグニンは比較的低分子のため燃料化に適する。水素初圧20-60気圧、温度400-450℃、酸化鉄触媒を用いるハイドロクラッキングにより生成するフェノール類を検討し8種を確認した。収量15%。 3.精油ならびに樹脂の利用〔住本昌之(九大・農)、後藤輝男(島大・農)〕裏日本に生育するオキノヤマスギ枝葉の精油収量は従来検討したもののうち最高値4.4ml/100g葉を示し、この増加分はモノテルペン類と含酸素セスキテルペン類の増加によること、太平洋側のオモテスギより裏日本側のウラスギ系統が精油含量に富むことを明らかにした。マツ類のパラコート処理による樹脂の最大含量は4月に注入の場合、樹脂量は8月に最高値32%を示し、精油量は8-10月にわたり増加した。5・10・20年生の樹木では5年生が樹脂・精油量とも最大(標準量の6倍)であった。
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