本年度は2回の合同研究討論会、ならびに「自然エネルギーの研究」研究成果報告会を行い、更に4回の総括班会議を行つた。第1回合同研究討論会(昭和60年7月22日・23日、建築会館、東京)では研究の進め方に関して専門的討議を行い、第2回合同研究討論会(昭和60年9月20日・21日、九州大学)で研究の中間報告と討議を行つた。研究成果報告会(昭和61年1月27日・28日・29日、建築会館、東京)では国内の大学、国立研究機関、企業からの参加をも得て討論を行つた。研究成果報告書は500部作製し、国内および海外の諸研究機関へも送付した。総括班会議では、本年度の研究計画、研究成果の検討ならびに評価、次年度の研究計画の検討を行つた。 本年度の研究成果の概要は次の通りである。 〔1〕太陽エネルギー利用の研究班は、太陽エネルギーの蓄熱システムとして無塩式ソーラーポンドの複合伝熱特性、顕熱および潜熱蓄熱の最高性能化、地中熱および地下帯水層の長期蓄熱手法、建築物の夏期冷却のための選択放射・水分蒸発、太陽放射を受ける建物内の空気循環・室温調節および調湿機構、密閉間欠吸着式太陽熱・冷却器、太陽熱利用パネルヒーテイングの室内熱環境評価等の研究が行われた。 〔2〕自然の流体エネルギーの開発研究班は、低速形低落差水車および高速形低落差水車の高性能化、風車の空力弾性を考慮した最適化、変動風速中における水平軸風車の最適設計、風力発電によるかんがい用揚貯水システム、アテニュエーター型波浪エネルギー1次変換装置、ウエルズタービンの特性解明、サボニウス風車の回転数制御システム、低コスト発電形波力発電の研究等が行われた。 〔3〕地熱エネルギー資源の開発工学研究班は、地熱帯の地質構造の解明のために岩石・鉱物学的探査、地質構造と変質作用およびフィッショントラック法年代測定による地熱資源の探査、物理探査法としてMTアレイ効果およびMT法による地下熱水分布の探査、化学探査法として地球化学的手法、同位体地球化学的手法による地熱探査法、また地熱坑井内の流動挙動、スケール除去等の研究が行われた。 〔4〕自然エネルギーの複合利用に関する研究班は、複数の自然エネルギーの併用、多目的用途への利用に関する研究として、海洋エネルギーの複合利用の基礎研究、複合熱源多目的開放型海洋温度差発電、太陽熱・風力エネルギーの賦存量と局地的利用の可能性、自然エネルギー複合利用に市街地の熱環境調整および最適な住棟配置計画、伝統的な自然エネルギー複合利用方式の現代住居への適用、および冬季積雪データ利用による渇水期の水資源エネルギーの最適管理等に関する研究が行われた。
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