研究概要 |
これまでえられたポリ酸イオンの光化学反応についての知見をもとに、主にタングステンのイソポリ酸、ヘテロポリ酸イオンを合成して光化学反応機構を分光化学、電気化学的手段を用いて検討しエネルギー変換効率の高いポリ酸イオンを開発することを目的とした。 1.光還元された【〔W_(10)O_(32)〕^(4-)】の構造とα電子の非局在化: 光触媒としてのポリ酸イオンの中で重要なイオン種の一つとして【〔W_(10)O_(32)〕^(4-)】がありこれはpH<2で安定である。このイオンの光還元種を【〔NH_2Pr(^i_2)〕^+】塩として単離しX線、ESR単結晶構造解析を行った。その結果、光還元により分子内にとり込まれた5α電子は77Kにおいてequatorialタングステンのサイト間をW-O-Wでのanti-fenomagnetic couplingにより非局在化していることが判明した。 2.Keggin型【〔BW_(12)O_(40)〕^(5-)】の光化学: モリブデン、タングステンのイソポリ酸イオンの光酸化還元反応についての一連の研究でえられた知見をヘテロポリ酸イオンの光化学の理解へと拡張する為、α-Keggin型【〔BW_(12)O_(40)〕^(5-)】とメタノールとの光酸化還元反応を中心に検討した。Kinetic isotope effectは1.6-1.8を与えることから電子移動過程において【CH_3】OHのC-H結合の切断が律速ではなく、電子移動は【H^+】の解離以前に【CH_3】OHより励起された【〔BW_(12)O_(40)〕^(5-)】へすでに起っていることが明らかとなった。また水素発生反応は二電子還元種【〔BW_(12)O_(40)〕^(7-)】と【H^+】との酸化還元反応によって起こり、pH<2の強酸性溶液中では還元種のプロトン化が支配的(pKa=1.5)となり〔【H_2】 【W_(12)】【O_(40)】〕【^(5-)】生成は水素発生に不均一触媒(Pt,Ru【O_2】など)を要することが判明した。分光化学、電気化学的手段を用いてえられた結果とを合わせてえられた光化学反応スキームがまとめられた。
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