1. 熱分解タール成分中の含酸素・含窒素官能基構造に関する研究:4種の石炭を310-500℃で熱分解し、生成したタール成分中の極性官能基構造に及ぼす石炭化度と熱分解温度の影響について検討した。低石炭化度炭では熱分解タール成分中に広い温度領域にわたって種々の含酸素極性官能基構造が分布しており、Wandoan炭では365-415℃を境界としてタール中の含酸素構造が著しく異った。これに対して夕張炭以降の高石炭化度炭では365℃以上の熱分解で生じるタール成分中の含酸素構造はフェノール性酸素を主成分とする極めて均一な構造となっており、また熱分解温度の上昇につれて生成タール中のフェノール性酸素含有量が急激に増加する(0.57 1.55wt%)温度領域から熱分解タール収量の急激なたちあがりが始まることとしてタール中のフェノール性酸素含有量の漸減に伴って単位温度あたりのタール収量が極大値を経て急速に低下することが認められた。熱分解タール及び石炭一次液化油中の含酸素構造を比較して、液化反応条件下における石炭中の種々のエーテル結合の切断等含酸素化合物の生成機構について検討した。次に石炭液化油中に高い濃度で存在し、液化油の酸化劣化安定性等に負の効果を有する酸性NH基の生成機構について同様な手法で検討した。 2. 石炭液化油及びその水素化精製油中の極性官能基分布に関する研究:Wandoan炭から得られた一次液化油を異なるプロセス条件で二次水素化した精製油中の各沸点留分への極性官能基構造の分布を明らかにした。また、溶剤水添塔のプロセス条件の設定及び溶剤水添塔への供給油の沸点範囲の選定は、液化油の4沸点留分の得率を大きく移動させるという点においても、燃料油としての酸化劣化安定性・色安定性等に大きな影響を及ぼす極性官能基構造に著しい変化を与えるという点においても極めて重要であることを示した。
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