研究概要 |
熱交換器の構成要素として、鉛直下降流中に置かれた表面が平滑な単一円管を対象としてミスト冷却の詳細が追究され、それに基づき運転条件の最適化とミスト冷却高性能管の開発が進められた。 1.噴霧滴が衝突する円管前面での諸量(熱・物質移動量,せん断力,滴の衝突付着量)を液膜運動方程式(質量,エネルギー,運動量)に組み込むことにより、気流と液膜の問題が連結され一般性をもった解が導出された。解析結果と実験結果の対応は極めて良く、ここで提示された物理モデルならびに解析の妥当性が確認されると共に、円管前面におけるミスト冷却熱伝達の詳細が明らかとなった。 2.以上の解析結果と実験的に得られた円管背面での液流に対する観察結果にもとづき、円管全面からのミスト冷却熱伝達が検討された。まず、ミスト冷却熱量Qを、単相流熱伝達Qc,液の蒸発潜熱Ql,衝突滴による冷却顕熱Qs,花下滴によるエンタルピー散逸Qfの総和で与え、それらを液の衝突量Mc,蒸発量Me,花下量Mf,濡れおよび乾き面積と関連づけることにより閉じた方程式を得た。以上の解析と実験との比較により、ミスト冷却における伝熱促進の機構が液滴噴霧量に依存する壁面濡れと関連づけて明らかとなった。 3.液滴噴霧に対する無次元質量速度、壁面と主流の蒸気質量分率の差、ならびに管径基準のレイノルズ数の関数として導出された濡れパラメータ【G^*】を用いて伝熱促進率を整理し、両者の相関を得た。これによりミスト冷却における運転条件の最適化が決定される。 4.円管背面での液の伸張性と下端部での離脱性を高めることにより、薄くかつ広い液膜の形成を意図し、溝付き,ワイヤ巻,メッシュ巻の表面構造管を供試した。実験によりそれらに対するミスト冷却の特性が明らかになるとともに、高性能管開発に対する目途を得ることが出来た。
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