研究概要 |
反応性蒸着【In_2】【O_3】膜と単結晶InPとのヘテロ接合太陽電池を試作し接合界面の状態を制御して高い変換効率を得るための製作条件の最適化を試みた。 本年度の研究では、単結晶Inp基板上に反応性蒸着法により【In_2】【O_3】膜をたい積してヘテロ接合太陽電池を製作した。基板に用いたInPは抵抗率3Ω・cmのp型の単結晶である。製作工程中で必要となる最 も高い温度は、輪面のオーム性接触を形成する際の450℃であり、低温プロセスのみで素子の製作が可能である。また、以前の研究結果から、反応性蒸着法は膜たい積時に基板表面に損傷を与えることが少ないものと考えられる。試作したセルは、ソーラシミュレータ光(AM1.5,100mW/【cm^2】)照射下において、開放電圧0.707V,短絡電流密度33.3mA/【cm^2】,曲線因子0.751の出力特性が得られた。変換効率は17.7%で、かなり高い値を示した。暗所における電流-電圧特性の測定結果から、飽和電流密度は2.1×【10^(-10)】A/【cm^2】、ダイオードの性能指数は1.64であった。また、容量-電圧特性の1/【C^2】対Vのプロットは直線的に変化しており、電圧軸への外挿点より拡散電位は0.85Vと求められた。これらの結果から、良好なヘテロ接合が形成されているものと考えられる。このセルは320-920nmの広い波長範囲で光に応答する。これは禁止帯幅の広い【In_2】【O_3】膜を窓層に用いた効果によるものである。 試作したセルの安定性を調べるために、酸素を20%含む窒素気流中において400〜600℃で30分間ずつ熱処理を行ったところ、450℃までの加熱では光電変換特性に大きな変化は見られず、550℃以上で加熱したとき特性の劣化が観察された。この結果から、本研究で製作した【In_2】【O_3】/InPヘテロ接合セルは500℃程度までの熱処理に耐え、良好な耐熱性を示すことが分った。
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