研究概要 |
研究者らが開発した方法によって作製した無機多孔性管状薄膜を用いて、水-アルコール系(メタノール,エタノール,イソプロパノール)混合ガスの分離を1気圧及び2気圧下での飽和温度条件にて行なった。この条件での膜分離は一種の分縮器と見なすこともでき、結果を気液平衡線と比較した。得られた結果は気液平衡線よりもはるかに上部にあり、しかも共沸に相当する現象が現われないことがわかった。また、アルコールの種類によらず殆んど同程度の水の透過性能が得られ、その分離機構は殆んど分子ふるいに近いことがわかった。 透過ガスを気体のままで排気除去することは省エネルギー的に有利ではなく、凝縮除去の方が好ましい。しかし、凝縮温度を極低温にすることは実用的でない。無機膜による分離においては比較的高温で分離が可能であり、凝縮温度を室温付近にすることが可能であった。この条件下では分離特性は多少悪くなるが、測定結果は気液平衡線よりもかなり上部にあり、透過速度も、アルコールの濃度が極めて高い所を除いては、低温の凝縮温度の場合に比較して大差がなかった。この条件下ではアルコールを極めて高い濃度に濃縮することはできないが、共沸点を越えて濃縮することができた。極めて高濃度に濃縮するためには凝縮除去温度を低くしなければならないが、濃度が高くなると除去すべき水蒸気の量が極めて少くてよく、ピンホールなどによるアルコールの漏れ量を小さくすれば、高純度濃縮に要するエネルギは大きくない。本研究では99.6モルパーセントまでの濃縮が可能であった。
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