南西諸島周辺から東シナ海大陸棚斜面にかけての海域では、年間を通して表面水温の高い期間が長く、低温水が大陸棚斜面及び南西諸島側で浅い層に存在している。そのため、この海域は海洋温度差発電に適している。高熱源については過去の年度で解析してある程度の結論を得ている。今年度は昨年度に引き続き冷水の供給に注目し、 1.効率的に冷水の得られる琉球舟状海盆の深層水が太平洋側から供給されているかどうかを知るため過去の資料を解析することゝした。南西諸島の西側の海域は黒潮が流れているため観測は多いが、東側(太平洋側)は少ない。ましてや、両側を1航海で行なっているのは最近ではほとんどないので過去の旧海軍の海洋観測の資料を使った。力学計算により流れ及び流量を求めると南西諸島を境にして、東西の出入が余りみられないときには太平洋側の水が諸島沿いに南下してきて、台湾と与那国島の間で北上し黒潮と同じ向きとなり舟状海盆に流入している。そうでない時には、沖縄と石垣島の間の1000mを越える深みを通して東西の海水が出入りをしているので、冷水の舟状海盆への供給は充分であるという結果が得られた。 2.深層の冷水が表層へどの程度供給されるかを実測で求めることは非常に難しいので、理論的に解き湧昇量を求める方法を検討した。まず、黒潮に直交する方向にはコリオリカと圧力傾度力が釣り合っているとし、流去する方向にはコリオリカ十非線形項が圧力傾度力と 釣り合っているとして解くとまず、水平流速が求まるのでこれと、質量保存式の積分から差分の式に直し、格子点におけるu、ωを求めれば冷熱源の湧昇流が求まることになる。この計算をするために約20年間の水温・塩分の資料を整理して実際の数値を入れる試みをしているが資料が膨大なため現在計算が進行中で整理にまだ少し時間が掛かる。
|