1.前年度の実験範囲を拡張し、多数の被験者を用いて、温輻射面と冷輻射面が同時に存在する場合、および温輻射面のみが存在する場合について、輻射面の面積、位置、温度を種々変化させて実験を行なった。 2.人体の全身温熱感の評定は、同じ作用温度OTであれば温輻射面を分散して配置した方が高くなる傾向がある。従って、MRT(平均輻射温度)のように輻射を平均化して扱う評価尺度では、このような輻射要素の強い環境の評価には不適当であると考えられる。 3.輻射の影響は、全身温熱感より局部温熱感に大きく現れる。全身温熱感と局部温熱感の相関をみると、顔、脚部、および体側部で高く、胸、腹では比較的低い。これは、着衣状態、輻射面の位置、人体部位による感覚の違い等によると考えられる。 4.局部温熱感とその部位での面作用温度OTpは線形関係にあり、局部温熱感を『中立』とするには、おおむねOTp〉20℃が必要である。 5.全身温熱感とOTの相関より、局部温熱感とOTpの相関の方が高く、また、温輻射面のみの場合、局部温熱感による全身温熱感への影響度の強い部位と対応する傾向が見られる。 6.今回の解析では、輻射要素が強い暖房環境において人体が快適である状態(温熱感として「中立」申告付近、輻射熱感として強く感じない程度)は、OTでは21〜22℃(全身)、OTpでは21〜25℃(局部)、ベクトル輻射温度VRTでは13℃以下と考えられる。
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