研究概要 |
D-T核融合炉では、そのブランケットにおけるトリチウムの増殖が重要であり、設計においてその核計算が行われている。その計算結果の検証と高精度予測技術を確立することが本研究の目的である。昭和59年度に直径120cmのリチウム球体系を製作し、その中心で発生させた14MeV中性子によるトリチウムの増殖比として0.74を得、中性子の増倍が必要であること、および計算も行って使用する核データに問題のあることを指摘した。 本年度は鉛を中性子増倍材としてとりあげ、リチウム球体系の内側に5cmおよび10cm厚の鉛球殻を入れた。この体系から漏洩する中性子のエネルギー・スペクトルと球内に配置した炭酸リチウム・ペレット、さらに放射化箔により反応率を測定した。トリチウム生成量の絶対値を求めるには中性子源の特性(発生強度、同角度分布およびエネルギー分布)を知ることが必要であるため、各種の箔の放射化を測定して詳細な結果を得た。 漏洩中性子のスペクトルから、40cm厚のLiと10cm厚の鉛からなる複合球体系でリチウム6によるトリチウム増殖比は0.141(計算値)から0.38(計算値では0.377)に増加する。また、体系内反応率測定から天然組成リチウムにおけるトリチウム増殖比は0.66(Li40cm+鉛5cm)で、鉛厚を10cmにすると0.58となる結果を得た。さらに、漏洩中性子エネルギー・スペクトルと体系内箔放射化率との測定結果から、鉛の(n,2n)反応断面積評価値に問題があることを指摘し、一方、鉛の二重微分断面積の測定も行って、その値が過小評価であるとともにソフト過ぎることを確認した。 以上の成果からみて、トリチウム増殖比を向上させるため黒鉛反射体を付加する必要を明らかにするとともに、そのような体系を用いた積分実験実施の重要性を提起した。
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