本研究班は、1983年度よりエネルギー特別研究(核融合)の研究班の一つとして発足し、3年間に環境トリチウムの分布・動態さらにその大気中の化学形についてかなりの成果をあげた。本年度は、3年間継続した研究をまとめ、さらに今後の研究の充実発展に資するため、1985年12月16〜17日、代表者の所在地である石川県辰口町白山荘に、諸機関、すなわち本研究班員全員のほか、それに加入していないがわが国において環境や生態系のトリチウムにつき、数々の成果をあげている諸機関が参集して発表討論を行い、それらの成果を示す資料図表を、集録した資料要覧を作成した。これによりわが国における環境トリチウムの現状を現時点において把握し、今後の研究や実際のモニタリングにも役立て、さらに国際的な研究交流にも寄与しうるようになった。 その内容を対照試料別[大気中トリチウム、降雨水、地表水、地下水、(含RI廃水系)、海水、植物、食品、その他]や分析測定関連等にわけてまとめた図表番号一覧も諸機関に対応して作成し、今後の諸研究者に役立ちやすいようにした。これにより今後平常時、緊急時モニタリング、環境影響評価、地域における水理的解析、地球化学的に役立つ知見を提供した。とくに大気中トリチウムのHTOとHTさらにCH3Tの化学形弁別測定およびHTOの気団による変動、全国各地での降雨のトリチウム濃度の変動データ、重水炉から放出トリチウムの降雨洗浄沈着が解析された。地表地下水では、現在の降雨の影響を大きくうけたもの、過去数十年前の大気核実験由来のトリチウムの影響の残るもの、トリチウムの半減期の数倍以上地下に滞留したものの3つの型とその混合に分類された。原子力発電所放水口海水の異常値は定期点検運転再開直前のバッチ放出の影響と考えられた。なお海洋での深度分布等についての成果も得られた。
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