トリチウムは極めて漏洩しやすく、器壁を通して、あるいは廃棄物固化体からも漏れ出てくる場合があり、非常に閉じ込めの困難な放射性核種である。かかる観点から、安全性を確保し、トリチウムに関連する理工学の円滑な進展に資するため、その漏洩、透過、拡散、あるいは漏洩したトリチウムの回収・除去、廃液の減容・固定化、汚染と除染、などに関する基礎的および実際的なデータと知見を得るための実験的研究を行なった。 核融合炉の発電体系を想定した場合、器壁を通してのトリチウムの漏洩量が最も大きいと考えられているのは、第一壁やダイバーター壁を通して、トリチウムがプラズマ側から冷却材側へ透過する量であり、この漏洩には、いわゆるプラズマ・ドリブン・パーミエーション(PDP)の効果が大きく作用すると考えられる。この問題についての実験を行ない、その温度や器壁の厚さ等への依存性などを調べ、またPDPの解明に資する知見を得ることができた(京大・東)。この第一壁を通しての透過に関し、器壁の放射線損傷によって生ずるトラッピングサイトの影響に関する実験を行なった(東工大・小川)。 また、グローブボックスのゴム材のような有機物を通してのトリチウムの透過と、それを減少させるためのゴム材の改質に関する研究を行なった(明大・仲川)。 また、トリチウムを取り扱う施設の安全性が最終的には、トリチウムの緊急除去装置によって担保されているため、その除去性能等に関する工学的研究が重要であり、トリチウムを使った模擬・漏洩回収実験を行ない除去特性の把握とその数理的モデル化などの研究を行なった(東大・田中)。トリチウムを含む放射性廃液を電気分解槽で濃縮し減容し、トリチウムが漏洩しにくい固化体にする研究を行ない、ある程度の見通しを得た。(九大・西川)。 また、トリチウムで汚染した計測器の光による除染法等についても成果を得た(富山大・松山)。
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