研究概要 |
1. 目的 低スエリング低クリープ速度および低放射化等の諸性質によって第一壁候補材料とし有望視されているフェライト系ステンレス鋼につき、残された照射脆性の克服の可能性およびその限界を追求することを目的とし、照射による組織変化および組織と強度の相関を基本的に明らかにする立場から集中的研究を行った。本年は過去2年間の成果をも含め、核融合炉環境下の予測につき総括を行った。 2. 成果 200KeV軽イオン同時入射可能なHVEM,二重ビームおよびその場観察可能な400KeV重イオン照射装置、100MeV重イオン加速器、4MeV二重ビーム照射装置が整備され、原子炉重照射にも途が拓かれ、重照射シミュレーションの手段は格段に充実した。またRTNS-【II】日米共同利用のほか、京大原子炉低温照射、各種低温電子線照射設備も照射欠陥の基礎的過程の追求に活用された。 オーステナイトおよびフェライト系ステンレス鋼の高純度基モデル合金につき、電気低抗、陽電子消滅、およびHVEMその場観察により原子空孔および格子間原子の移動エネルギー等が明らかにされた。また不純物原子の転位、結晶粒界等への偏析挙動がサブサイズおよびオーバーサイズ原子の相違の立場から整理され、照射下析出挙動の基礎的機構が明らかにされた。さらにHVEMその場観察により上述の諸特性におよぼすヘリウムおよび水素原子の役割が明らかにされた。 フェライト系ステンレス鋼の低スエリング特性については上述の転位特性からバイアス係数の合金による減少が新しく指摘された。また照射脆化の機構については、比較的低温度では微小欠陥集合体による降状応力の上昇、より高温では粒界等での粗大析出物の形成に歸せられ、これらにおよぼす不純物原子の役割が上述偏析析出特性から整理され、脆化防止への指針が明らかにされた。なおまた粒界脆化、水素脆化、ヘリウム脆化についても同様の成果が得られた。
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