本研究は核融合炉用低放射化材料として注目されているアルミニウム合金についてその組織とトリチウム分布との微視的関係を電顕オートラジオグラフィによって明らかにしようとするものである。試料としてAl-1mass%【Mg_2】Si合金およびAl-4mass%Cu合金を溶製し、溶体化処理後、種々の時効を施した。これらより走査電顕および透過電顕用試料を作成し、トリチウム・電顕オートラジオグラフィを行なった。得られた結果は次の通りである。 1.Al-1mass%【Mg_2】Si合金のG.P.ゾーンはトリチウムのリペラーである。棒状中間析出相と母相との界面および板状平衡析出相と母相との界面はトリチウムに対して強いトラップ作用を示す。しかしこれらの中間析出相および平衡析出相そのものはトリチウムに対してトラップ作用を示さない。 2.Al-4mass%Cu合金のG.P.ゾーンはトリチウムのトラップである。板状中間析出相と母相との界面は強いトラップ作用を示す。しかし中間析出相そのものはトラップ作用を示さない。塊状平衡析出相はそれ自体トリチウムに対し強いトラップ作用を示す。以上の観察結果より次のように結論できる。 3.G.P.ゾーンのような母相と整合界面を有する生成物はその生成によって母相に圧縮応力場が生ずるときトリチウムに対しリペラーとなり、引張応力場が生ずるときトラップとなる。 4.中間析出相および平衡析出相が母相と非整合界面を有する場合、それら析出相と母相との界面はトリチウムに対し強いトラップ作用を示す。 5.析出相自身が母相よりも水素吸蔵能力が高い化合物である場合には母相との界面よりも析出相自身がトリチウムの強いトラップとなる。
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